「カナデくん、終電は?」
「えっと、六時五分前」
「そっかぁ、遠いもんね。じゃあ暗くならないけどやっちゃおう」

叶居さんは大きなビニール袋から花火の袋を取り出すと、開けて開けて! といたずらっ子のように肩をすくめて笑った。

「うわ、火薬の匂い。こういう花火、小学校の頃以来かも」
「僕もだ。すごく久しぶりな気がする」

薄っぺらで細長い小分けの袋を開けると、理科室でもあんまり嗅がないような強い火薬臭がした。
ピンク色に染められた木の棒に銀色の火薬がついた手持ち花火が五、六本入っていて、僕はそれを腰掛けたコンクリートに置いた。別の袋には木の棒が青いものや、鉛筆くらいの太さの紙筒でできているものもあった。叶居さんは僕が出した花火を焼き鳥の串のように綺麗に揃えて並べていく。

「先に全部あけちゃったら、湿気らないかな」
「大丈夫だよ、うち毎回こう」