『京』の頭文字に釣られて京浜東北線を目指してしまって、ホームに着いたはいいが大宮方面とあり、これでは逆戻りだと思って反対向きのホームへ行ったら今度は神奈川方面の駅名が書いてあった。僕が向かっているのは埼玉でも神奈川でもなく、千葉なのに。
よくよく確かめ『京』違いと気づいて京葉線のホームへ向かうも、本当にこれで合っているのか不安になるくらい遠くて、下調べ不足の自分を恨みながら案内の看板を信じてひたすら進んだ。
そんなわけでぐったりな上にスマホが使えず暇つぶしもできない、とにかく残りの三時間は虚無だった。
何か本でも持ってくればよかった。

八時半すぎの電車に乗って、乗り換えること三回。叶居さんの住む駅に着いたのは三時近くだった。検索して見た画像どおりの小さな駅で、迷路のような恐ろしい東京駅を思い出してホッと安堵した。

改札は一つ。トンネルのようなこじんまりした改札の横には待合室があった。
映画の『秒速五センチメートル』の駅に似ていて、主人公が電車を乗り継いではるばる好きな子に会いに行くシーンが浮かんだ。なんだか今までの時間と重なって、意外と悪くないかもしれない。