僕がずっと気にしていたことは、今までの場面とは違って、ここには必要なものだったらしい。
嫌われてしまうかもと思っていたことは、部長という巨人の肩を借りて部の役に立てることだったらしい。

「おい、泣くなって」

参加賞で貰ったスポドリが、飲んだそばから涙になって止まらない。
勝てるなんて思った馬鹿な自分に泣けて、もっと強くなりたくて悔しくて、部長や皆が優しくて。

夜、叶居さんから引っ越しの荷造りが終わったとLINEがきた。
ボロ負けして悔しかったことを話したら、筋肉ムキムキ笑顔がウザ眩しいアニメキャラのスタンプと一緒に、悔しいのは本気出したからだよ、と返事が返ってきた。

『悔しいのは本気出したからだよ』

叶居さんの声で聴こえた気がした。

叶居さんは明日、この街を離れる。だけど、また会える。約束の日は、支部大会が終わった翌週だ。