「カナデ、なんで今まで隠してたん」
「ひいっ!」

いきなり、部長が首の後ろに冷えたペットボトルを押し付けてきた。

「ほい。今日の参加賞」
「あ、りがとうございます」

僕がペットボトルを受け取ると、部長が隣に座って続けた。

「お前、全員の苦手なとこ、狙ってたよな。偶然とは言わせないぞ」
「え、っと……、見てるのだけは得意というか……、その……、でも、全然勝てませんでしたし……」
「ったり前だ! 皆お前より真剣に三年間やってきたんだ、簡単に勝てるわけないだろ」
「で……すよね」
「でもな、そういう観察力があるやつが部には必要なんだ。気付いてたんなら言えよ」

部長が僕の肩をバシバシと叩いて大きな声で笑うと、加藤先輩や他の部員もこっちを向いて笑った。誰の声か分からなかったけれど、もっと早く輪に入ってくれたらインターハイも行けたかもよー、とまで言われて、僕は困惑するしかできなかった。

「弱い後輩は弱点とか言っちゃ迷惑かと」
「んなわけあるかー! 仮にもそう思うんなら言えるように強くなれよ。思ったんだろ、もっと本気になりたいって、強くなりたいって、バドが楽しいって。シャトルがそう叫んでたぞ」
「えっ、シャトルが?」
「おうよ。俺が引退したらバド部の分析担当はお前だからな、頼んだぞ」