だけど、時間が経つとあの時の興奮した感覚がだんだん薄れてきて、やっぱり僕なんかが変に頑張っても周りの空気を乱してしまうだけなんじゃないかと考えてしまう。今のまま空気みたいな部員としてバド部に在籍していられることが、平穏で最良なんじゃないか……。

「つぎカナデ、頑張れ」
「ありがとう、お疲れ」
「おう」

社交辞令的な挨拶をしてコートに入る。迷っている場合じゃない、こんなんじゃ駄目だ。叶居さんに本気でやるって約束したじゃないか!
周囲の音が煩くて、耳を塞いで目を閉じた。
叶居さんのコンクールを思い出すんだ。あの迫りくる音楽の刃を!

巨人の肩に乗れ!

あがけもがけ走れ!

祈れ! 願え! 叫べ!

叶居さんの失望した声を思い出せ! 

『カナデくんはなんでバドミントン部に入ったの?』
『本当に今のままでいいの?』
『ちょっと尊敬かもって思ったのに』