僕の中で言いたくて言えなかった言葉。言ったら何かが変わってしまうんじゃないかとしまい込んでいた言葉。
声に出した瞬間は焦ったけれど、言ってしまえば心の中にサイダーみたいな夏の青空が広がって、たまらなく爽快な気持ちになった。

「うん! カナデくんも頑張って! あとこれ!」

小さなメモ用紙を僕に手渡した叶居さんは、他校生たちに押し流されるように遠ざかりながら大きく手を振ってくれた。
メモにはラインのIDが書いてあって、帰りの電車で入力したら『県代表!』とすぐにメッセージが届いた。

それを見たら無性にラケットを振りたくなった。僕はバドが好きだ。そして叶居さんが好きだ。