音楽の刃を喉元に突き立てられているような圧力。なんとなくでやり過ごしてきた僕に「目を背けるな」と今まで避けて通ってきたものを突き付ける。

巨人の肩に乗れ!

あがけもがけ走れ!

祈れ! 願え! 叫べ!

聴いている間じゅうずっと全身の血液が沸騰するような感覚で、曲が終わったのにも気づけない程に僕は興奮していた。どれくらいそうしていたか、椅子から立ち上がることもできずにいた僕に誰かが声を掛けてきたのが聞こえた。

「……くん、カナデくん、来てくれたんだね。ねえ、ちょっと大丈夫?」

叶居さんだった。僕は慌てて立ち上がり、唾を飲み込んだ。自分でも良く分からない興奮状態のままで何か挨拶をしなければと口を開く。

「この間はごめん! 僕も本気でやってみるよ、バドミントンが好きだから!」