市民会館の入り口に着くと、ガラス張りのロビーにいろんな制服を着た学生がいるのが見えた。
いま入ったら誰かに会ってしまうかも、と出番のひとつ前の学校の演奏時間になってから会場に入った。

演奏中はロビーでお待ちくださいと言われ、広いロビーの大きすぎるソファで時間を待つ。
わずかに漏れ聴こえてくる音楽を聴きながら、二階席まで吹き抜ける空間を見上げる。壁面の巨大なモザイクアートや天井から垂れ下がる照明をなんとなくスマホに収めて、ちゃんと会場に来た証拠を確保。
このまま二度と会わないかもしれないのに、会ったときのことを考えて行動してしまう僕は滑稽だと思った。だいたい、二度と会わないつもりなら今日ここに来る必要もなかったのだから。
気持ちを伝える気もないのに未練なんて、この間のことを謝る気もないのに好きな気持ちを持ち続けているなんて、滑稽だし卑怯だなと思った。
やっぱり帰ろうか。そう思ったとき、会場から拍手が聴こえて同時に客席の扉が開いた。

もう幾らも残っていないペットボトルの中身を喉に流し込み、僕は客席へと向かった。