僕の青春タイムリミットは、突然やってきた。
叶居逢花(かないおうか)が転校する。

そのことを知った時は、青天(せいてん)霹靂(へきれき)という言葉を今ほど的確に使えることなどないんじゃないかと思った。

動揺のあまり頭痛がして、しばらく机に伏して頭の中の嵐が去るのを待っていた。転校、転校……。今日は部活、行けそうにないな。

部のラインに「体調不良なので帰ります、すみません」と送信。マネから「りょ」のスタンプが返ってきた。

僕は世間でいうところの陰キャで、人と話すことがあまり得意ではなくて、なんとなくで入ったバドミントン部も万年雑用係としてマネに言われるまま黙々と裏方をこなしている。そんなだから、登下校も人とあまり会わないルートや時間帯の情報を蓄積した脳内データをもとにして、校舎の西端にある階段を使う。

そこに、彼女がいた。
もうとっくに帰ったはずの叶居逢花が。