受け取ったミレーヌは、やわらかい笑みを浮かべた。


「大事に持っていてくれたのですね。でも、これは桜子に差し上げたものですわ」


 そう言って、ミレーヌはハンカチでわたしの涙をぬぐうと、
「あらためて……もらって頂けるかしら?」
 と、ハンカチをわたしの手に握らせた。


「ええ、喜んで」


 笑い合うわたしたち。

 そして、ミレーヌはそっと手をつないできた。


「もう一つ……わたくしから桜子にプレゼントがあるのです。受け取ってくださいまし」

「えっ……?」

「とっておきの魔法をお見せしますわ。少々大がかりですから、桜子も力を貸してくださいませ。このまま手をつないでいるだけでいいのです。桜子の美しい心が、わたくしの魔力を高めるのですわ」

「はあ……」


 ぽかんとしていると、ミレーヌはもう片方の手を空に向けた。


「光よ、天に七色の橋をかけよ!」


 ミレーヌが叫ぶと、たちまち青空に虹が現れた。


「わあっ!」


 なんて素敵な魔法だろう。


「虹ですわ!」


 テラスの方から、芽亜里さまたちの歓声が聞こえてくる。

 わたしはミレーヌと顔を見合わせ、くすくす笑って、また空を見上げた。


 オレンジの夕焼けに消えていったミレーヌ――。

 さらに、今こうして、ふたりで見上げている虹――。

 また一つ、心に光景が刻まれる。

 これは夢や幻なんかじゃない。

 現実なんだと確かめるように、わたしはぎゅっとミレーヌの手を握り直した。