「さあ、時間ですわよ!」


 そうこうしているうちに、午後四時になった。

 芽亜里さまが叫んだと同時に、姿見からまばゆい光が放たれて――。

 シュトラーザ王国と、世界がつながった……!?

 まずは芽亜里さまから姿見へと入っていく。

 その姿は、鏡の奥へと消えていった。

 信じていなかったワケじゃないけれど、やっぱり本当だったんだ! と、ドキドキが止まらない。

 続いて、杏奈さま、雪平、奥田先生の順に、姿見の中へと消えていく。

 残されたわたしと理央は顔を見合わせた。

 緊張するよ。どうしよう?

 理央は、わたしの不安をやわらげるようにほほ笑んで、
「桜子お嬢さま。いっしょに参りましょうか」

「うん……」


 わたしは、理央が伸ばした手を取った。

 先に理央が姿見に入って、わたしが後に続く。

 鏡の中に入ると、あまりのまぶしさに目をつむった。

 次の瞬間には、やさしい風が髪をゆらして……。

 そっと目を開ける。


「わあっ……」


 青空が広がり、見わたす限りの草原――。

 目をこらせば、遠くに山々や、お城や、お屋敷も見える。

 き、来ちゃったよ!

 異世界のシュトラーザ王国に!


「どうです? 本当につながっているでしょう?」


 杏奈さまの視線をたどって、ふり返ると、巨大なクスノキがそびえ立っていた。

 太い幹には、わたしたちが出てきた光る穴がぽっかりとあいている。


「あと二時間で、その穴はふさがってしまうのですわ。さあ、急ぎましょう」


 芽亜里さまが歩きだし、杏奈さまと雪平が続く。

 わたしは、再び理央と顔を見合わせた。

 うなずき合って、手をつないだまま後を追う。