「なんかまたムカついてきたな。椿、お前、空手やってんだってな? こいつらボコっていいぞ」

「はあ……」


 雪平先輩に言われて、困り顔の理央くん。


「もうその辺にしときなさいよ、雪平くん。男子って、やーね。乱暴で……」


 ふり返ると、宝来先輩が呆れ顔で立っていた。その隣には、九条先輩!


「宝来先輩! 九条先輩!」


 うれしくなって、駆け寄るわたし。


「見事なお嬢さまっぷりだったわよ、加賀美さん! あたし、見直しちゃった!」


 ポン! と宝来先輩に肩を叩かれて、わたしはかーっと、頬が熱くなった。


「も、もしかして、聞こえてました?」

「うん、全部ね。自信たっぷりで良かったわよ」

「あはは」


 苦笑いするわたし。

 あれはわたしの素じゃなくて、お嬢さまになりきったから言えたことだ。

 だけど、何も言わなかったら、きっと後悔してたよ。

 わたし、少しは変われたのかな?


「桜子さん、めっちゃ良かったで」


 ふいに、関西弁が聞こえてきて、わたしは目を丸くした。

 パチパチ! と、にこやかに拍手している九条先輩の口から飛び出したのは関西弁!


「『お嬢さま部』で学んだことが生きたんちゃうかな? エエ感じやん」

「あ、ありがとうございます……」


 とまどっているわたしに、こそっと宝来先輩が小声で教えてくれた。


「九条先輩は奈良県出身なの。中学から、こっちに引っ越してきたのよ。素のときは関西弁だから……」

「そうなんですね……」


 九条先輩のイメージになかったから、びっくりしたよ!