「この花壇は、『お嬢さま部』が管理してるんだ」


 ふいに、雪平先輩が口を開いた。


「え……?」

「ここ以外にも、あと三つ管理してる。うちの学校には美化委員がいるけど、人の目にふれるような場所しかやらないからな」

「はあ……」

「定期的に、学校の敷地の清掃活動もやってるよ」

「えっ、そうなんですか?」


『お嬢さま部』がそんなことをするなんて意外! なんて言ったら失礼だけれど。

 雪平先輩は、わたしをちらりと見やって、
「意外だろ? 杏奈や九条先輩もジャージ着て、ゴミ拾いだぜ?」
 と、苦笑いした。


「まっ、そういったことも『お嬢さま部』の活動に含まれるのさ。あまり知られてないけどな。……こんなもんか」


 水やりを終えた雪平先輩は、わたしに向きなおった。


「『お嬢さま部』のモットーはな、――装いも、心も美しくあれ。瞳に映るものも美しくあるように――だ。ただコスプレして遊んでるだけの部じゃねーんだよ」

「はあ……」


 すると、雪平先輩はにやりとして、
「あの椿ってやつ、お前の彼氏?」
 って聞いてきた。


「ええっ!? ち、違います、違います!」


 わたしはあわてて否定した。


「クラスメイトですよ! 小学校五年のときも同じクラスで、よくしゃべってたし……。理央……椿くんが『お嬢さま部』に興味ありそうだったし、わたしは付き添いみたいなもので……」

「ふ~ん。まっ、どっちでもいいけど」


 ムキになって否定するわたしを、楽しんでるみたいな雪平先輩の表情。

 からかわれた……?