水曜日の放課後――。

 わたしは、新校舎の裏側に回って、旧校舎へと向かった。

 今日は『お嬢さま部』の活動日。

 部室に突撃して、ミレーヌのことを聞いてみよう。

 そう決心して、ミレーヌのハンカチも持ってきたけれど……。

 旧校舎の薄暗い昇降口が見えてきたら、その決心も一気にしぼんでしまった。


「ダメだぁ……」


 高飛車な“お嬢さま”たちの顔と、雪平先輩の冷たい表情が思い浮かんで、足が前に進まない。

 どうせ「落ちたくせに、何の用ですの?」って言われるだろうし。

 わたしは、引き返したり、また戻ったりをくり返して、とうとう旧校舎の周りをウロウロと歩き回った。

 今日は理央くんはいないしなぁ。今日から柔道部に仮入部するらしいし。

 わたし、昔から、ひとりじゃ何もできない。

 舞とは学校が別になったし、かのんもバスケ部で忙しくなるだろうし。

 誰かに頼るんじゃなくて、もっと強くならないといけないけれど……。

 気がつけば、わたしは、旧校舎と新校舎にはさまれた中庭に来ていた。


「わあ、きれい!」


 中庭の一角(いっかく)に、レンガで囲われた花壇があって、色とりどりの花々が咲き誇っている。

 わたしはしゃがみこんで、花に見とれた。

 こんなところに花壇があるなんて知らなかったよ。

 生徒はあまり近づかない場所だし、わたしだけの秘密の花園だあ。