「ごめんね、桜子ちゃん」


 旧校舎を出たあと、わたしの手を離した理央くんは、何度も謝った。


「僕に付き合わせたばっかりに、桜子ちゃんまでイヤな思いさせちゃった……。ホントごめん!」


 わたしは、パタパタと手をふって、
「ううん! 理央くんのせいじゃないよ! わたし、実はちょっぴり、『お嬢さま部』に興味あったんだよね」

「そうなの?」


 目を丸くする理央くん。


「だけど理央くんは、かのんに強引に決められちゃったもんね。あの子、ちょっと強引なトコあるから……」


 わたしが苦笑いしながら言うと、理央くんは首をふった。


「いや、実は僕も『お嬢さま部』には興味あったんだよね。かのんちゃんには背中押してもらったから感謝してるよ」


 ……となると、わたしも、かのんに背中を押してもらったのかなぁ?

 挑戦は、完全に失敗に終わったけれど。

 本来は「ダメで元々」くらいの気持ちだったのに、落とされてしまったことは結構ショックで……。


「それにしても、あんな言い方はないよね」


 悔しさをにじませた声色で理央くんが言う。


「うん……」


 九条先輩に、自信の無さを見抜かれちゃった。

 だけど、わたしよりも理央くんの方がショックだったと思う。