「あらあら。芽亜里さまったら、お手厳しいこと」


 宝来先輩が、クスクスと笑い声をたてる。


「少々言い過ぎましたでしょうか?」


 そう言いながら、九条先輩もほくそ笑んでいる。

 こ、こわいっ! 『お嬢さま部』の人たち、こわいっ!


「僕の不合格の理由も教えてもらえますか?」


 まっすぐな眼差しで九条先輩を見つめて、理央くんがたずねた。

 九条先輩もまた、理央くんを見返して、
「……椿くんは、かわいいものがお好きとか。ドレスを着てみたいという、あなたのお気持ちは理解しますけれど、動機としては、いささか軽いように存じます。『お嬢さま部』は女装を楽しむ部活ではありませんの」

「……わかりました」


 くちびるを噛み、ひざの上に置いた拳を握りしめる理央くん。


「最後に、加賀美さん」


 九条先輩が、わたしに向きなおった。

 ひえっ! わたしはイイのに! そんなの聞きたくないっ!


「あなたは『すみません』を言い過ぎますわ。お嬢さまは、謝罪するときも、感謝を述べるときも、『すみません』だなんて、あいまいで、下品な言葉は口にしないのです。あなたが『すみません』を多用するのは、自分に自信がないから……と言えますわ。そういう方は、この部で学んでいくのは難しいと存じます」

「はあ……」


 ズシーンと、巨大な岩が頭に落ちてきたみたいだった。

 わずかな時間で、自分のすべてを見抜かれてしまったような気分。

 そう、わたしは自分に自信がない。

 舞としか話せなかった小さなころから、それはずっとそう。

 成長したつもりでも、やはり変えようのない部分はあるもので……。