アンタたちがどこにも行かないなら、こっちから離れるしかない。

 ぷいっとそっぽを向いて、その場を離れようとすると――。

 わたしは何かにつまづいて、前のめりにコケてしまった。

 一瞬、右ひざに熱を感じて、やがてじんわりと痛みが広がっていく。

 何が起きたのか、すぐにはわからなかった。


「あはは。桜子ちゃんって、ドジね~」


 中辻さんのあざ笑う声がして、わたしは足を引っかけられたんだと気づいた。

 くやしさと、恥ずかしさと、悲しみがごちゃまぜになって、鼻の奥がつーんとした。

 でも、泣かない! こんな子たちの前で泣いてたまるもんか!

 ぐっとこらえ、起き上がろうとすると――。


「あらあら、大丈夫?」


 涼やかな声が降ってきて、スッと差しのべられた手は、息を呑むほどきれいだった。

 指は細長く、透き通るような肌つやで、クリスタルを思わせる。

 わたしは、その手を伸ばしている女の子を見て、さらに驚いた。

 とっても長い金髪にウェーブがかかっていて、大きな瞳は海の色をしている。

 そして、その顔立ちはフランス人形のように整っていた。

 外国の美少女だ!

 わたしよりずっと年上……中学生くらいに見える。

 美少女がニコッとほほ笑んでくれたから、わたしはためらいつつも、その手を取った。