「桜子ちゃん、今日はひとりなの?」


 放課後、ひとりで近所の公園に遊びにきたわたしは、クラスメイトの女子数人に囲まれた。

 いつもは舞ちゃんと来るのに、何か用事があるとかで母親と出かけてしまったから、その日は、珍しくわたしひとりで来たんだ。


「わたしたちと遊ばない?」


 クラスメイトのひとりが誘ってくれたけど、わたしは首を横にふって、黙りこんだ。

 舞ちゃん以外に話しかけられたら、いつもこんな調子で。


「無駄だよ。この子、舞ちゃん以外とはしゃべらないし、遊ばないもん。……ね?」


 意地悪な中辻(なかつじ)さんが、下からわたしの顔をのぞきこむ。

 わたしは微動だにしないで、じっと中辻さんの顔を見つめた。

 ――なんでからんでくるんだろう? わたしのことは放っておいてほしい。早くあっちに行ってよ。

 わたしは、ただそう願った。


「なによ、この子。すっごくこわいんだけど」


 眉間にしわを寄せて中辻さんが言うと、他の子たちも同調した。


「ホント。前から思ってたけど、桜子ちゃんって、不気味だよね」

「ねえ、わたしたちが話しかけてるのに、なんで無視するの?」

「感じ悪―い」


 口々に、わたしに悪意を向けてくる。

 舞ちゃんがいっしょのときは、そんなことは面と向かって言ってこないくせに!