部活紹介のあとの休み時間。


「あたし、バスケ部に決めたよ!」


 かのんがわたしの席までやってきて、勢いよく言った。


「バスケ部かあ。カッコいい男子の先輩、多いもんね」


 わたしがにやりとすると、かのんは軽くせき払いして、
「単純に、バスケが好きだから選んだの!」
 って、顔を赤らめながら反論した。

 かのんは球技はあまり得意じゃなかった気がするけど、まあ、そういうことにしておきましょう。


「桜子は? もう決めた?」

「う~ん、やっぱり美術部……かなあ? まだわかんないけど」


 わたしの答えは歯切れが悪い。

 お嬢さま部のことが心のどこかで気になっているからだ。


「カッコいい男子の先輩といえばさ、『お嬢さま部』の雪平先輩、イケメンだったね~」


 うっとりしながら言うかのん。


「うん、執事にピッタリな先輩だよね。でも、『お嬢さま部』があるなんて知らなかったよ」

「あたしは知ってたけどね」

「えっ!? そうなの!?」

「三つ上の姉貴が、ここの卒業生だもん。話には聞いてたよ。入部テストが異常に厳しくて部員が極端に少ないから、ずっと謎の存在らしいけど」

「謎の存在……」


 わたしは、ぽつりと呟いた。

 そういえば三年が九条先輩だけ、二年は宝来先輩と雪平先輩のふたりで、計三人だけの部だもんね。

 新入生が何人入るかわからないけれど、部活として成り立ってるのが不思議なくらい少人数だ。