「芽亜里さま!」


 宝来先輩はうれしそうにマイクをゆずって、雪平先輩は深々と頭を下げた。


「メアリー!」

九条(くじょう)先輩―!」


 またまた、いろんな呼び方で歓声が飛ぶ。

 部長――金髪の女の子は、マイクに向かって口を開いた。


「杏奈も雪平も、新入生のみなさまに、肝心なことをお伝えしていませんわよ? 三年生にして部長の、このわたくし――九条芽亜里がお伝えします。伝統ある礼城中学の『お嬢さま部』は格式の高い部ですの。男子も女子も受け入れるのは説明にあった通りですけれど、入部希望者が全員入れるわけでもありませんわ。そこで明日の放課後! 入部テストを行います!」


 九条先輩が高らかに宣言すると、新入生の間からとまどいの声が上がった。

 公立中学の部活で入部テストなんて、珍しいと思う。

 だけど、わたしはそんなことはどうでもよくて、九条先輩を穴があくほど見つめていた。

 九条先輩は小柄で、くりっとした瞳が印象的な美少女。

 宝来先輩がカッコいいモデルなら、九条先輩はかわいらしいアイドルといった印象。

 記憶の中のミレーヌと九条先輩を比べてみる。

 ミレーヌの方がもう少し背が高かった。

 それに、九条先輩は整った顔立ちだけど、やや童顔だ。

 ミレーヌは大人っぽかったし……。