午前は始業式、午後は通常授業を受けた後、
いつも通り流星と下校を共にする。
その際も、やっぱり話題にあがるのは……
「………変わんだってね、こーそく」
「ね。終業式に生徒会長が言ってたお知らせって、
このことだったんだね」
前回の終業式で言葉足らずすぎた会長の代わりに、
今日の始業式では、副会長が登壇した。
藤白くんは、
本校初となる校則変更について、
実現するまでの経緯だったり、
この変更により、生徒たちの選択の幅を広げ、
より柔軟で、より幸福な学生生活の実現を期待していること、
次年度からの適用だから、今回3年生は対象外となってしまうのに、
大多数の方が「自分たちの卒業後でもいいから改則してあげて欲しい」と声をあげてくれたこと等を、
壇上で、それはもう立派に話していた。
『ただし自由の中にも限度があるため、
常に学生らしい健全さを失わないように』
との注意喚起も添えて。
そういえば……。
その姿を見た凛が「ほんとに副会長なんだ」って呟いてたな。
なんで疑ってたんだ。
「…あれ。
しーちゃん、もっと騒ぐと思った」
「まあねぇ。そりゃ最初、
お知らせ見たときはびっくりしたよ。
でも中身見て、今の生活に影響なさそうだったから」
「あー……そう」
ん?なんか、微妙な返事だな。
それより。
流星と合流してからというもの、
なんとなくモヤモヤするというか、
頭につっかえているものがあるような感覚がしてる。
なんだろ。
何か大事なことを忘れているような……。
「始業式の日にはっぴょーしたのは、正解だよな。
その前だったら、冬休み、ぜってーヤバいことなってたし」
「や、ヤバい……?
っというか変更前の校則って、1年生の間でも不満だったの?」
「うん。当たり前じゃん。
クラスの西山ってヤツが、ぜってー彼女作るとか大声で騒ぎまくって、せんせーに怒られてた。開放感得すぎ」
「へ、へえ……」
……すごいな。
1年生は、入学してまだ半年なのに。
それに、卒業しちゃう3年生も意向を示したなんて…
「みんな、それだけ窮屈に感じてたのかな?」
「んー……。
ま、これから堂々とできるから喜んでんじゃん?
卒業待たなくても」
「卒業……待たなくても……」
……あれ?
まって。
これ、どっかで聞いたことあるぞ。
ええっと………
『オレ、好きな人いるから。』
『しゃーなし、卒業まで待ってんじゃん。
ほんとは待ちたくねーけど』
……あ!!!!!
思い出した……!!
これだ!
さっきから引っかかってたこと!!!
「りゅ、流星……!
流星も、好きな人!
卒業まで待ってるって!!」
「忘れてんのかと思った」
うん……。
前夜祭で流星からその話を聞いて以降、
ふと思い出しては考えてたけど……。
正解がわからず諦めたから、完全に忘れてたな。
あんなに衝撃を受けたのに。