無数のライトが、一斉に灯る。


——眩しい。


随所に設置された、色とりどりの電飾も…


一際輝く、大きなツリーの頂上の星も…


光に照らされた、真澄くんの笑顔も。


目に映るもの、全てが眩しくて、綺麗だった。


「栞さん」

「………」

「……栞さん?」

「…………………」


「……おーい」

「はっ……えっ?呼んだ?」

「はい。……きれーですね」

「うん………きれーだね」


「……あの。栞さん、これ。
…もらってくれませんか?」

「え?」


差し出されたそれは、
真澄くんが今日一日中、
大切そうに持っていた紙袋だった。


「えっ、これ!……わ、私に?」

「は、はい」

「……開けてもいい?」

「はい。もちろん」


紙袋の中には、手のひらサイズの、赤い箱。
その箱の中にあったのは——


「あっ……えっ?これ……なんで…?!」


最初の雑貨の露店で目に留まった、
モミの木と天使のスノードーム。


「栞さん、これ気になっとったみたいやから…
………ちゃいました?」

「い、いや!…そう。綺麗だなって思ってて…。
ど、どうして……本当に私がもらっていいの?」


「は、はい。
そ、その…クリスマスプレゼント……というか……
えっと……そう!お土産のお返し、ってことで…!
ふ、深い意味は考えんといてください……!」


「ええ……?」


——その時。


パッと一瞬、脳裏に[とある光景]が浮かんだ。


あれは多分……
今よりちょっと先の、未来の光景。


大人になった私が、
見慣れない間取りの部屋にいて。
その部屋に、このスノードームが大切に置かれている。


私の隣に、誰かの姿があって。


…あの横顔は、きっと——

「…りさん?栞さん」


再び、真澄くんの呼びかけで、はっと気づく。
心配そうな顔が、こちらを見ていた。


「大丈夫ですか?もしかして、体調悪いとか…」

「う、ううん。綺麗だなって感動しちゃって。

…って、こんな素敵な物もらったのに、
私、何も用意してなくて……ごめんね」


「や!ほんま、お返しなんで!
なんもいらないですよ!」

「そう……?」


手のひらの上でひかる、スノードーム。
内側で、スノーパウダーが舞って。
周りのイルミネーションが、ガラスに反射して。


キラキラ、綺麗。
お店で見た時よりも、一層。


「………真澄くん」


「……はい」


「……あのね。

ほんとうに嬉しい。ありがとう」


「……………っ」


真澄くんが、急に胸のあたりを手で抑えて、
苦しそうに下を向く。


「え!?どっ、なっ、なに!?だ、だいじょ…っ


「………あかん。

大変なことになる前に、さっさと合流しましょう」


「え!?た、大変なことって!?
…まさか、病気!?」

「や、そゆのじゃなく。…こっちの話です。
とにかく、ツリー前いってみましょ」

「えっ…う、うん…。
とりあえず大丈夫…なんだね?」


ヨロヨロと、頼りない足取りで歩き出す真澄くん。
私は、もらったスノードームをカバンにしまって、その後を追った。