「オマエ、なんでいんの?」

「いや、なんで知らんねん。俺やねん、誘ったの」

「だから、勝手に誘うなっていってんじゃん」

「お前の許可は要らん…って何回言わすん?
嫌なんやったら、帰ってもええよ」

「あ?帰るって、オマエが?」

「ちゃうわ!なんで俺が留守番やねん!」


……当日、待ち合わせの駅で、
真澄くんと合流した直後のコレ。


嗚呼、本当に五月蠅い。

残念なことに、私の不安な気持ちは、的外れではなかったようだ。


両脇の、のっぽが2人…私の頭上で。
飽きもせず、似たようなことで言い争う。


仲裁役は、もう諦めた。不毛すぎる。

[思えば今まで、流星とこんなに言い合える仲って、私以外いなかった。

だから…これはこれで、良い形なんだ…!]

…っていう、それっぽい口実を見つけたので、
この件の対処を放棄する。


「…2人とも置いてくよ。電車内では静かにね」

「へーい」「はいっ」



電車を待つこと、10分。
電車に揺られること、30分。
駅から歩いて、10分。


見えてきたのは、人だかりと………

身長3mくらいの、大きなサンタ像。

サンタさんは、大変にこやかな表情で、
手招きをするようなポーズをして立っている。

この先が、入り口なんだろう。


屋外のイベントだけど、
会場全体はレンガ調の建造物で囲われているから、まだ中が見えない。

けど、鈴の音でリズムを刻む、アップテンポなクリスマスソングが漏れ聞こえてくる。


「おー!おっきいサンタさん!なんか、わくわくするねっ」

「サンタってあんま笑ってるイメージねーけど。逆に怖くね?」

「こんなでっかいヤツ、どうやって設置しよんですかね?撤去も大変やろな…」

「………」

ムード台無し。


ノンデリ(ノンデリカシー)な2人を無視して、
入り口をくぐると——


「かっ…………可愛い!!!」


——目の前いっぱいに広がったのは、絵本の中のような光景。

あちこちに、サンタさんやトナカイのオブジェクト。

モミの木の葉っぱ風のデコレーションモールが、会場中にはしっている。
そこに取り付けられた、赤いリボンや色とりどりの装飾品が、大変良く映えていた。


ズラリと並んだ、暖かみのある木製の露店にも心が躍る。
それらの屋根には、降り積もった雪の装飾が施されていて、この世界観を演出するのに大きく貢献している。

彫り深く、綺麗な色の瞳を持つ店員さんが呼び込みをしているのも相まって、
異国の世界にワープしたんじゃないかと錯覚してしまう。


そして、中心には、
真下から見上げるとテッペンが見えないくらいの
大きな大きなツリーが、派手な装飾で着飾って、私たち来場者を見守っている。


プレゼントボックスのオブジェクト。
消えないキャンドル型のライト。
私の顔の3倍くらいある、特大サイズの靴下……
細部の演出まで抜かりがない。


会場にあるものすべてで、
「クリスマスだよ」って教えてくれている。


すごいな。
この空間に居るだけで、もう楽しいや。


昼間なのでまだ点いてないけど、
中央のツリーにはもちろん、露店、街路樹、柵、各オブジェクトなど…
至る所に、たくさんの電飾が設置されているようだ。

これが一気に点灯すると、どんな景色になるんだろう。
今からワクワクが抑えきれない。