「だっ、大丈夫だよ、凛。1教科だけなら。
数学の補講日が、24日にあたるとは限らない……しっ」
私が言い終わらないうちに、
凛が[補講者スケジュール]という、
禍々しいオーラを放つ紙をつきつけてくる。
[数学Ⅱ・・・12/22〜12/24/13:00〜15:00]
「…そ、そんな……これじゃあ……っ」
「………遅れてでも……必ず行く………
…大人しく現場で待ってな、子猫チャン……!」
「りっ、凛————!!」
………かくして。
当日、凛に補講があるのは確定となった。
流星と真澄くんはどうだったかな…。
「ん」
その日の帰り道。
恥じらう様子もなく、流星は私に、
堂々と答案用紙を突きつけてきた。
そりゃそうだ。
なんてったって………
「………全教科90点越え、ですか」
愕然とした。
100点って、夢や幻の得点じゃないんだね。
「だから言ったじゃん。よゆーだって」
「………」
私の努力の2週間が可哀想。
いいもん。赤点ないもん。頑張ったもん。
「ちなみに……
真澄くんはどうだったか、知ってる?」
「しらね」
「…ですよね」
転入で来れるってことは、
そんなに心配は要らない気はするけど…。
『俺は大丈夫です!
なんとか平均以上いけました!
ほんまは、部活であんま勉強できんかったんで、心配やったんですけど…。』
真澄くんからのLINKが届く。
やっぱり。
……真澄くんの言うことだから、嫌味に感じない、けど。
私は必死で勉強してやっと平均なのに…。
なんでみんな、そんなに要領いいんだ。
まあ、とにかく。
これで補講があるのは凛のみ、ってことに。
集合時間、今は12時の予定だけど、遅らせたほうがいいよね。
このまま真澄くんに相談してみよう。
『3人でってのもアレだし、集合時間遅らせよっか?』
そもそも、
クリスマスマーケットの本番って、夕方な気がする。
なんでお昼集合にしたんだっけ……。
『でも、ええんですか?
13時半からステージあるんですよね?』
はっ……!
そうだった…………!!
頭の中、試験勉強のことで一杯になっていて、
すっかり忘れてしまっていた。
実力派ゴスペルグループの
パフォーマンスがあるんだった……!!!
…当日のステージスケジュールを確認したときに、
他の誰でもない、私が言い出したこと。
テレビ越しでしか聴いたことがないから、
あの魂のこもったパワフルな歌声を、直で体感してみたいって思っていたのに……!
『そうでした………。
すみません、とっても観たいです………。』
『ですよね。言うて良かった。
ほな、12時のままで大丈夫ですか?』
『はい、よろしくお願いします……。
覚えててくれて本当にありがとう、真澄くん。』
流星と真澄くんと、私……。
不安の残るメンバーだし、補講の凛には申し訳ないけど…。
イベントは楽しみだなぁ。