『はあぁ…よかった……。
俺… もう話す機会もらえへんと思った…』


突然、吐き出すように話し出す真澄くんに驚き、体が跳ねる。


「ええ?!だからなんで真澄くんがそんな…
『栞さん』

「にえっ?」


『昨日のこと、忘れたりしません。
栞さんを困らすようなことせーへんために。

もう迷惑かけませんから…
だから、試合…次は観に来てほしい。
それに、これからも俺と…話してほしい……っす。』


…悪いのは私なのに。

なんで真澄くんは、こんなに謙虚なんだろう。
どうしてそんなに、寂しそうにするんだろう。


「そんなの、こちらこそだよ。
ごめんね。ありがとう真澄くん」

『う………は、はい。や、こちらこそ…。
あの、栞さん』

「ん?」


『俺…2年間、我慢しますから。褒めてくださいね』

「えっ…そ、それは……なにを………」

『それは言えません』


アレ。
さっきまでの謙虚はどこに。


『……あの。でも、埋め合わせ、っていってくれるんなら……。
……らっ、来月の24日は…あ、あいてますか』

「24日?」


カレンダーを見たけど、
まだ先だから、特に印は入っていない。


「うん。あいてるよ。でも平日でしょ?
あ、その頃はもう冬休みか。
もしかして、試合なの?」


『いや…オフっす』

オフかい。


『迷惑なら、やめますけど……。
く、クリスマスマーケット、いきませんか…?』


クリスマスマーケット……

マーケット……


……いや、く、クリスマス……!?


もう一度カレンダーを見直す。
さっきは日付の方ばかり目がいってたけど…

そうだ。来月は12月。
だから24日は……クリスマスイブじゃないか!


「いや、まあ…迷惑じゃないし、全然いいんだけど…
それ………私と2人で行って楽しめる?」


クリスマスマーケット、実際に行ったことはないけど…
きっとデートにぴったりなイベントだろう。
幸せそうな恋人たちで溢れているに違いない。


『そんなんあたりま………っ!
……いや、もしアレなら、笠井先輩とか、誘ってもらっても……』

「なるほど…。いいかも。凛、喜びそう。
………流星にも声かけてみていーい?」

『…はい』

「わー、楽しみ!誘ってくれてありがとう!」

『よ、よかったです。ははは…』


真澄くんとの電話を終えた私は、
早速、凛に連絡を入れる。
結果はもちろん…『絶対行く』との返事。


楽しみもできたし、ギクシャクも解消できた、はず。
凛の言うとおり、早めに真澄くんと話をして良かったな。