家を出て、学校へ向かう。
いつもの通学路で、
いつもと同じく隣に流星がいるのに、
私服だからか、なんか変な感じがする。
いや……まてよ。
私服だから、だけじゃないな。
同じ方向に向かう人の中に、
やたらと女の子が多い気がする。
化粧しているからパッと見ただけではわかんなかったけど、
よく見ると、学校で見かけたことがある子が何人も。
しかも、ほとんどの女の子たちは、
間も無く冬だというのに、
カバンからはみ出るくらいの大きな団扇を持って移動している。
長方形の板のような物を抱えている子もいる。
チラッと、1人の子の持つ団扇の表面が見えた。
何か、文字が書かれているようだ。
アルファベットで……
M、A、S、U……J……?
その先は見えない。
…あ!あれだ。
俗に言う、推し活というやつ。
近くで、イベントでもやるんだろうか。
「ってか。しーちゃん、いつそんな約束したの」
「へ、約束?」
「今日のこと」
「あぁ……、お土産渡した時、だよ」
「なにそれ。聞いてねーけど」
言ってないからね。
流星に言ったかって、凛にも聞かれたけど…
こういうのって逐一伝えるべきなの?
……なんで?
「…何渡したの」
「り、流星と同じようなやつ」
「は……あぁ、チョコかかったポテト?」
「う、うん…」
私、嘘はついていない。
キーホルダーのことを聞かれていないだけ。
……また喧嘩したら嫌だし。