1限、2限と、授業が進んでいく。


3限目を迎える頃には、
朝の浮ついていた空気も落ち着いていて、
「転校生」という珍しいワードも、
私の頭の中からすっかり消え去っていた。


『キーンコーンカーンコーン……』


4限目を終えるチャイムが響く。
凛と昼食をとるためにカバンを開けて、気づく。


「…………あ。お昼ご飯、忘れた」


「えーー!?うそーー!!!!!
………栞って、意外に抜けてるよね?」


呆れた顔の凛に「校則には厳しいのに」と、
嫌味をお見舞いされる。


うう…。
こればっかりは何も言い返せない…。


「購買行って戻ってくるね。先食べてて」

「もー!早くねー!
一緒に食べたいんだから!」

ぷくっと頬を膨らませる凛。


その顔が、可愛………


……ごめん、やっぱちょっと面白い。



教室を出て、1階にある購買へ向かう。
早く行かないと売り切れちゃう、けど…
【廊下は走らない】。基本の「基」だ。


この時間、道が混んでて、
まっすぐ向かうとかえって遅くなるため、
あえて迂回をして行く。



「………っの」


誰もいないはずの、静かな校舎内の渡り廊下。
遠くの方から、小さく声が聞こえた…気がした。

気のせいだと、構わず購買へ足を進める。


「…ちょっ………あの!」


………?
やっぱり、聞こえる気がする。


はぁ。
お弁当も忘れるし、幻聴もするなんて、
疲れが溜まってるのかな。

やだな、まだ火曜日なんだけど……。


——グッと、ふいに右肩が重くなった。


「!?」


驚いて振り向くと…………


そこには、
大きな身長の、見知らぬ黒髪の男の子がいた。
その彼が、無言で私の肩を掴んでいる。


………顔を真っ赤にしながら。