制服のままウロウロとはできないので、
着替えを済ませる。

お土産を手にした私は、
待ち合わせ場所の公園へとたどり着いた。


家で、少し時間を調整したつもりだったけど、
まだまだ早かったな。



美しく色づいたイチョウたちと一緒に、真澄くんを待つ。


冬に向け、少しずつ日の入りが早くなってきた。
もうすでに、太陽が沈んで見えなくなっている。


目線の先にある、水平線付近の空の色は、まだ赤い。

けど頭上には、夜を知らせる、深く濃い青の空。

それらが混じり合った中心部は、藤の花のように淡い紫……。


なんて素敵なグラデーション。


こういうの、なんていうんだっけ。
数分しか見れない、刹那の魔法。


ああ、そうだ。


マジックアワー……


「……っ栞さん」


風が通り抜ける。

イチョウの葉が舞う。

幻想的な空の下。

沈んだ太陽の方から、
真っ直ぐ私へと向かう、真澄くんのシルエット。


なんだか、一枚の絵のような光景に、
ドキっと大きく打つ私の心臓。


こちらへと辿り着いた彼は、
相当走ってきたのか、肩で息をしている。
もう秋なのに、汗も流れている。


「ま、真澄くん!えっ、早くない!?」

「さ、きん…っれ…んしゅーっ…なが、つづいっ……でっ…
「わあぁ!い、息!息を整えて!」


落ち着くように、という意味を込め、
私は両手の平を、真澄くんへ向ける。


彼は数秒間、ゼェゼェと荒々しく肩を上下させた後、
ひとつの息を、大きくすって、はいた。


「はぁ…すんません…。お待たせしました。
最近、練習長引く日続いとったんで、
今日は早よ終わったんです」

「なるほど…って、
それじゃ余計に、そんな走ることなかったのに!」

「や…そうですよね…、
なんか、栞さん待ってるって思ったら…はは」

「ええ…」

ただでさえ練習終わり。
疲れてるに決まってる。
…申し訳ないことをした。


「…ごめんね急がせて。来てくれてありがとう」

「い、いや!俺が勝手に走っただけなんで!!
ってか、その、お帰りなさい」

「あはは、ただいま」

…なんかちょっと照れるな。