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「真澄くぅん、身長大きいねえ♡何cmあるのー?」

「あ…183っす………」

「すごーーい♡」

「じゃあ兄弟はー??」

「え…っと…お、おとうとが……」

「きゃー♡おにーちゃんなんだぁ♡」


……なんなん?この人たち。
なんで俺のこと知ってるん?


後夜祭になって、(真澄 純)は突然、
名前も知らん女の人たちに囲まれた。


こんな経験はじめてで、どうしたらええかわからん。
共学ってのは、こんなに怖いとこなんか…。


一緒におった友達は、いつの間にかあんな遠くに。

SOSサインを送ってるけど、
哀れみの目をお返しされるだけ。
薄情なヤツらや。


「ちょっとぉ、真澄くん?聞いてるー?」

「えっ、その……すんません」

「ねえねえ、関西弁で話してみてー♡」

「………ほんま勘弁してください」

「カンベンだって!!」
「こっちじゃゼンゼン言わないよね!」
「「ねーー」」


……しんど。


かわるがわるに、あれこれ聞かれ、ジロジロ見られ。
もーうんざり。
俺は、動物園のパンダやないねん。


いろんな匂いが混ざって、頭痛もしてきた。
女の人が苦手になりそうや。


…さっきまで楽しかったのに、
いっきに幸福を吸い取られた気分。


「あの…俺、ちょっとそろそろ………」

「えー!だめだめ!真澄くんは!」

「そーそー!せっかく仲良くなったんだからぁ〜。いなくなっちゃやだぁ」


仲良くなった…?
いや待って。俺[は]って何?


あれ。
さっきまで同じような輪つくっとった、斉藤消えてるやん。


あれ?
なんか俺のとこ、斉藤の分も吸収してない?


…アイツ逃げたな。


「ねぇ純くん♡今度サッカー部見に行っていい?」

「ズルぅい、私もいきた〜い♡」

「じゃあ私とは、外で遊ぼー」

「きゃー!それこそズルじゃん!」


…なあ、いつまでやるんコレ。


あーあ。
全部栞さんやったらええのにな…。
あの人なら、こんなこと言わへんけど……。


…うん。やっぱ俺、栞さんのこと好きなんや。


一目惚れってとこからはじまったけど、
他の女の人に、こんなけ囲まれても、好意的に接されても、なんとも思われへん。

誰でもええわけやない。

栞さんやから………

「ねーねー、真澄くぅん?」
「なんか言ってよー」
「もしかして、照れてるの??カワイー!」


…はあ、頼む。誰か助けてくれ。


切なる願いはむなしく、
結局、後夜祭が終わるまで俺は、
パンダ役を降ろさせてもらえんかった。