「…オレ、しーちゃんの弟じゃねーから」

「また!?
いいよもう。そんなこと、言わなくてもわかってるよ」

「また?またって、どーゆーいみ」

「え…」


『栞さんの兄やないですよ』

うーん。今日一日で、同じようなことを2回も否定されたから、咄嗟に[また]と出てしまっただけ。
…でもそれ、説明難しいな。


「なに。アイツにも言われたの」

「う、うん。兄じゃないよ、だったけど…」

「ふーん。アイツのことは兄みたいっておもったんだ?オレは弟なのに」

「うっ…。ね、ねぇ。家族みたいだって言われるの、そんなに嫌?」


例えば、自分の立場に置き換えてみると…

『しーちゃん、オレのねーちゃんみたいだね』
『栞さん、俺の妹みたいですね』

うーん。
まあ、色々と違和感はあるけど…

「……私だったら、嬉しいけどな?」

「まじガキ」

「………」

…やっぱ、こんなに憎たらしい弟は嫌かも。


でも、憎まれ口を叩けるほどには、元気を取り戻せたようだ。


「しーちゃん」

「ん?」

「ごめんね、あんなトコ、オレが入ろってゆったから」

「ううん。気にしないで。さ、もどろ。流星」

「まあ、しーちゃんと一緒ならいーよ」

「はっっ!!てゆーか、真澄サークルなんとかしてあげないと!真澄くん、困ってたよ」

「あ?なにそれ。ぜってーヤダ」

「いやいや、流星の責任でもあるんだよ!」

「はあ?しらねー、ほっとこうぜ。
てか、見つかんないよーに、はじっこからいこ」

流星は、急に私の腕を引いて、
運動場の隅へ歩き出した。

「わ!!ちょっ、あぶな!」

足がもつれ、躓きそうになる。
そんな私を見て、流星はご機嫌に笑っている。


いつもなら「ひっぱるな」って、怒ってる場面だけど……
今はなんだか、その笑顔が嬉しい。


その後、凛とも合流し、
私たちは後夜祭が終わるまで、
楽しくおしゃべりをして過ごした。


流星も楽しそうにしてるし、
やっぱ追っかけてよかったな。