『ーー現世での行い、気をつけなければ、
次はアナタの番………』
語り手のナレーションが流れる。
真澄くんのおかげで、
出口ドア前のゴール地点に辿り着けたみたいだ。
すっごく長く感じた。体感は5時間くらい。
実際は15分にも満たないのだろう。
改めて、悪いことはするものじゃないな、と思えた。
コンセプト通りだ。
「栞さん歩けますか?」
「うん、本当にごめんね。ありがとう」
「気にせんでください」
真澄くんの背中から降りて、自分の足で立つ。
うん、全然歩けるな。
さっきは、なぜ立てなかったのか不思議なくらいだ。
出口のドアを開けると…
「し、し、栞ーーーー!!!」
なにかが、勢いよく抱きついてきた。
外が眩しくてすぐ認識できないけど、
まあ、間違いなく凛だろう。
「ごめん、ごめんねえええ!
怖かったよね!アタシが……あたしがあぁあ」
「わ!ちょっ!大げさだよ!大丈夫だから、ね?」
今にも泣き出しそうな勢いなので、人目が気になる。
なんとか凛をなだめ、自分から引き剥がした。
「…しーちゃん」
「あ、流星…。
…ご、ごめんね。勝手にどっかいっちゃって…」
「………ん」
あれ。
いつもみたいに嫌味の1つや2つ言ってくると思ったのに、なんか元気ない。
……流星も怖かったのかな?
「残り時間は、全部楽しいことをしよう」という凛の提案のもと、時間が許す限り回った。
『ーーこれをもちまして、南条祭を終了いたします。本日のご来場、ありがとうございました。
お手元のゴミにつきましては…………』
終わりを告げるアナウンスが流れる。
色々あったけど、今年の南条祭も、楽しかったなぁ。
お化け屋敷以降、
2人はあまり喧嘩もせずに……
っていうか、あれ。
流星の声をほとんど聞いていない。
「流星?」
「うん」
「どうしたの?」
「うん」
「…大丈夫?」
「うん」
ダメだ…。お返事botと化している。
こんなの、初めてだ。