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「オ マ エ ラ カ…!!」


「い、いや………いやあぁああぁあぁ」


「しーちゃん!」
「栞さん!?」


1人でどんどん進んじゃうしーちゃん。
もちろん、すぐ追っかけよーとした。

ケド。


『待て。迷い込みし…現世の者たちよ……
…この先へ進むのなら…
…我の…言葉を……聞いて…いけ……』


残されたオレ(斉藤 流星)たちに、
背後の[エンマもどき]が待ったをかけてくる。
やけにでけー被り物。


モドキは、雰囲気作りのためか、
無理やり低い声で、
出来るだけ間延びした話し方してくる。


まじうぜぇ。早よしてくれ。


『右に行けば…楽しい仲間と…
一生…仲良く暮らせるが…
左は………地獄の始まりだ……
よく考えて進むことだな……
は は は は は…』


…なんの話。

言いてぇことだけ言って、奥に消えていくモドキ。
……ってかこれ、ホラーのつもり?ギャグだろ。


「しかもココが地獄なんじゃねーのかよ」

「や、そんなんええねん。
とりあえず早よいかんと」

「……言われなくてもわかってっし」


急いだけど、しーちゃんの姿は見えねーまま、
左右に分かれている地点についた。

アイツが言ってたの、ここのことか。


「…手分けせなあかんな」

「………言われなくても」


さっきからコイツ、まじ…


…んなことより。どっちだ。


んー…
右は[天国もどき]で、左が[地獄]
…とか言ってたな。

あー。しーちゃん、運悪いとこあるしな…


「オレ、左いく」

「ほな俺、右な」


…コイツには負けたくねーな


見落とさないように、隅々まで、
道端に転がっている仕掛け人形のウラとかも探しながら進んだけど。
しーちゃん、どこにもいねー。


もう外へ出れてんのかも。
出口について、急いでドアを開ける。


眩し。
目が慣れるまで時間がかかった。

見えるようになってから辺りを見渡したけど……


「りゅ、流星くん!
そんな急いでどうしたの……ってか、ほか2人は?」


…凛ちゃんしかいねー。



「……しーちゃん、出てきてねーの」

「う、うん。まだだけど……どゆこと?」

凛ちゃんに、さっきのことを説明した。


ってかあのモドキが言ってた、
地獄の始まり〜とかなんとかって。

出口でて現世に帰ってからが、ほんとの地獄…ってイミ?マジしょーもねー。


「そっか…とりあえず、純くんを待つしかないね」

「…………」

ぜってーアイツと出てくんじゃん。


むかつく。


なあ。なんでしーちゃんなの。
オマエは誰でもいーだろ。
オレはしーちゃんじゃなきゃ、ダメなんだよ。


しーちゃんのためなら、
オレは地獄にだって迷わずいけるのに。



『地獄の始まり』


…あー。
やっぱ、ほんとにそーかも。