……暗い。


分厚い暗幕が張り巡らされた室内は、
外の光も、音も、一切寄せ付けない。


代わりにあるのは、
受付で1人1本渡された懐中電灯の頼りない灯と…

定期的に聞こえる
「オチロ…オチロ……オモイ シレ………」という、おぞましい声。


このお化け屋敷のストーリーは、
いじめを受けて自殺に追い込まれた女の子が、
復讐心から実行犯たちを地獄に落とし、
さまざまな恐怖を体感させる、というもの。


その実行犯たちが苦しむ様を、私たち来場者が追体験するというコンセプトで、
『悪事は全て自分に返る』ってことを身をもって体感してほしい、
という熱い想いが込められているんだそうだ。


入り口に入ってすぐ、
女の子が受けた仕打ちのダイジェスト映像に乗せて、
彼女の心情を語るムービーが流れる。
迫真の演技だし、かなり手の込んだ演出だ。


ムービーが終わると、順路への幕が上がる。


ビビリ腰の私を間にして、
両脇の2人が歩幅を合わせて歩いてくれる。


懐中電灯で照らされる通路には、
焼け焦げた骸骨や、血の跡がいくつも見つかる。

そのたびに、私は「ひっ」と、叫び声をあげてしまう。 


「だ、大丈夫ですか、栞さん」

「う、うん、まだなんとか…」

「しーちゃん、ヤバい。見て」

「え?」


流星が照らしたのは…


…赤い鬼の顔だった。


「ーーーーっ!!!」


私は思わず、流星の腕をつかんだ。
下からライトが当たっているせいで、かなり恐く見える。

腹立たしいことに、そんな私をみて、流星は笑っている。


「なにしてんねん、ガキ」

真澄くんが、私を流星から引き剥がす。

「うるせ、黙ってみとけ」

今度は流星が、自分の方に私を引き寄せる。

「そんなん、できるわけないやろ」

それをまた真澄くんが……ってああもう!

「揺らすなっっ!怖いんだから!!」


こんなとこでまで喧嘩しないでほしい。