展示の様子を十分に見られたため、
私たちは別館を出て、本館に戻る。

「そろそろアトラクション系いきたいよねっ」

MAPを見ると、
定番の輪投げやスーパーボールすくい、
迷路や脱出ゲーム、
家庭科部のハンドメイド体験…
手作りジェットコースターなんてのも。

たくさんの種類の出し物があり、迷ってしまう。


「ね。オレ、これがいー」

流星が、目の前の多目的室を指す。
その窓には、おどろおどろしく、垂れた血のような字体で[地獄体験ツアー]と書かれた看板が掲げられている。


「え゛。じごく……ってこれ、お、お化け屋敷では…?」

流星、私が怖いの苦手なの知ってるくせに…!


「あーここ知ってる!3年1組のお化け屋敷だね。
3教室分くらいの広さあって、内容も評判いいらしいよ」

「へぇ、よう出来とるんですかね」

「アレ?すっごい行列って聞いたけど…今並んでないね」

「気になる」

ああ、みんなが興味を示している…!
入る流れになってしまう…!!


「で、でででも!これ、3人までだって!
4人じゃ無理だね、あーザンネンダナー」


私は『室内狭いので、1回につき最大3名まで』という注意書きを見つけ、諦めるよう必死に促した。

が…


「ペアになりゃいーじゃん。この前のボウリングと同じチームで」

「オイ。なに勝手に決めてんねん。今度はちゃうペアでいくで」

「は?お前とペアなんでヤダし」

「なんで俺とお前やねん!!」


まって!
2人で、なんて余計怖い!!!


「ごっめーん!アタシ、暗いとこムリなの!」


2人の喧嘩を止める余裕もない私に代わって、
凛が間に入ってくれた。



よかった、助かっ……
「だからぁ…、3人でいってきて⭐︎」

口を挟む間もなく、凛が「3名ですー」なんて言って、勝手にチケットを購入し、私たちの背中を入口側へと押す。


「じゃ、楽しんできてねーー!!」


「まってよ!私も怖いトコなんて…っ
「しゃーね。じゃ、いこ、しーちゃん」
「えっいや…
「栞さん、怖かったら、俺によっかかってくださいね」
「まって、押さないでっ
「触んなバカ」
「バカ言うなアホ、お前こそ手ぇどけろ」


両脇でガヤガヤとされ、私の声はかき消されていく。
少しずつ、入り口へ押し込められる。


そして…


……パタンと、静かに扉が閉まった。