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「オレ、好きな人いるから」
いよいよバレたと思った。
いや、ほんとはバレるつもりだった。
物陰にしーちゃんがいることはわかってたし。
「しーちゃんの声、聞き逃すわけねーし」
ここまで言ってっし。
わかるだろ、ふつー。
オレの好きな人は、自分だって。
「…もし、その人と回りたいなら、私たちとの約束は気にしなくていいよ?
あ、ていうかそもそも、この学校の人?私も知ってる人?」
……わかってねんだよなあ。
やっぱ、おもしれーくらい、伝わんない。
オレのことを気にしてくれてんのは、ふつーに嬉し。
や、欲を言えば、もっと妬いたり焦ったりしてほしーよ。
でもそんな期待、するだけムダだって、何十回と経験して学んでる。
しーちゃんは知りたがってるケド、
やっぱ、こんなとこで、こんなタイミングで言えるわけねー。
困らせるだけだし。
ま、ダイジョブだよ。今わかんなくても。
いつかぜってー、もう逃げられないような状況で、
イヤってほどわかってもらうからさ。
覚悟してね、しーちゃん。