流星…好きな人なんていたんだ。


好きな人なんて………いたんだ………!?


衝撃の事実に1度では処理できず、思わず脳内で反復してしまった。
いつの間に…?まったく聞いてないけど??


あ、切り抜けるための口実か?
でもあの女の子、心当たりがありそうだったな。


しかし…。今回のことでわかったけど、
みんな、知らぬ間に、恋というものをしているんだな。

その先の『交際』を望まなければ、
人を好きになること自体は御法度ではない。


それより、どうしよう。
この話、聞いちゃったこと、本人に言うべき?
たまたま聞こえたことにするとして。

とりあえず、盗み聞きの現場を抑えられるのはマズイ。
流星が行くのを待って……


「しーちゃん、覗きなんて趣味あったんだ」


目を瞑って、腕を組んで、ウーンと考え込んでいた私の目の前に、
いつのまにか流星の姿があった。

呆れ顔でこちらを見ている。


……なぜ、見つかったんだろう。
仕方ない。こうなったら、潔く謝ろう。


「…ご、ごめん。つい聞いちゃった。
隠れてたのに、何でわかったの?」

「だって、一瞬、オレのこと呼んだしょ」

「えっ、アレで?ほんとに一瞬だったよ!?」

「しーちゃんの声、聞き逃すわけねーし」


…忠誠心の強い飼い犬みたいだな。


「そ、そう。…で、嘘だよね?」

「なにが?」

「好きな人がいるって話…。私、聞いてないし」

「言ってないし」

「え!?まさか…。ほ、本当の話なの!?
切り抜けるための嘘じゃなくて??」

「ホントだし」


ええ。こんなに一緒にいても、知らないこともあるんだ。
…なんかショックかも。


「…でもさ、付き合っちゃダメなんだよ?」

「わかってっし。
だからしゃーなし、卒業まで待ってんじゃん。
ほんとは待ちたくねーけど」

意外だ。
ワガママ流星が、律儀にマテをするなんて…


「あ、南条祭は?
…もし、その人と回りたいなら、私たちとの約束は気にしなくていいよ?
あ、ていうかそもそも、この学校の人?私も知ってる人?」

しまった。気になって、たくさん質問しちゃった。
鬱陶しがるかな。

チラッと流星を見上げると、意外にも笑っていた。


「気になる?」

「…まあ、ちょっと………いや、結構……」


流星がフッと笑う。


「……おしえねー。
あと、南条祭は約束通りだから」

そう言って、スタスタと行ってしまった。


ええーー!
またいつものパターン!
今回は教えてくれる流れじゃないんかいっ!

期待した私がバカだった…。