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「赤ペンキ持ってる人ー!ここにも塗って!」
「ねー余ってるダンボールない?」
「あれ?余剰テープどこー!?」
「誰かー!看板置くから位置みてー!」


あちこちで賑やかな声が聞こえる。
この時期は一番、校内が活気で溢れる。


『南条祭』。
1週間前から準備を開始し、明日がいよいよ本番だ。


進学校らしい催物として、
保護者や次期入学希望者に向け、
別館をまるごと使用した真面目な展示コーナーが設けられる。


展示内容は、学校の歴史や、これまで受賞したトロフィー、進学先大学一覧、サイエンス部の研究結果、書道部や花道部の作品…などなど。

その中には、(田中 栞)が所属する、
美術部の展示もあり、すでに会場セッティングは終わっている。


しかし。哀しきかな、他の在校生にとって、別館はあくまでオマケ。
メインとなるのは、本館や運動場を使用して展開される、各クラスや文化部による、模擬店や出し物だ。


焼きそばやフランクフルト、お化け屋敷などの王道なものから、
タピオカやアサイーボウルなどの流行りもの、
レインボーロールケーキ、AI体験などの独特なものまで。

どの店も、装飾だったり、メニューの種類に気合が感じられる。


みんなが本気になっている理由の一つとして…
実は、この南条祭では、売り上げ1位を達成したクラスに、表彰状と賞品が与えられる。
そのため、どのクラスも、優勝を狙って燃えている。

ちなみに賞品は、そのクラス全員分の[学食割引券]だ。
いかにも、学生らしい。



また、体育館内ステージでは、演劇部や吹奏楽部やダンス部などの、さまざまなパフォーマンスが行われる。

当日、在校生は、店番などで鑑賞できないため、
前夜祭として、今日の夕方に、在校生向けステージが行われる。


その在校生向けステージ限定で披露される、
先生たちだけで構成されたバンド『Kyoin Rock』のパフォーマンスは、
毎年異様な盛り上がりをみせ、南条祭をより活気付ける。


そんな前夜祭までの間、
各クラス・各部とも、最終仕上げに勤しんでいる。