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最悪。


あと1本…………


あと1本、倒しとけばっ………!


昼食をとるために入ったファミレス。

そのドリンクバー前で、
(真澄 純)は悔やんでいた。


あの時、緊張して、変に力入ってもて…
あと1本…や、あっこで全部倒せてたら……!


……来月の文化祭……あ、南条祭か?
そこで、誰にも邪魔されんと一緒に…………


「…真澄くん?大丈夫?」


後ろからの声にビクッとして振り向くと、
ドリンクバー用のコップを持って小首を傾げる栞さんが。


今更やけど私服…可愛いな。


「す、すすんません、邪魔っすよね、退きます!」

「あ、ううん、いいよ。
私まだ決まってないから。先どうぞ?」


そう言われても…
今のこの時間を延ばすための会話をさがすのに必死で、
後で飲む物なんて、選んでる余裕ない。


何か話したいのに、なんも言葉がでてこん。


…先に口を開いたのは、栞さんやった。


「ってか、さっきは勢いで4人でって言っちゃったけど…
せっかく年に1回のお祭りなんだから、遠慮なく他の子と回っていいからね」

「…え」


「真澄くんと回りたい子、いっぱいいるだろうからさ。あ、男女問わずね」


…気ぃつかってゆうてくれてるんやろけど……。
心にグサっとくる。


「…なんで。なんでそー思うんスか」


「だって真澄くん、かっこいーし、優しいし、面白いしさ、絶対クラスの人気者でしょ」

一瞬舞い上がりそうになったけど、
まだギリ悲しみの方が勝っとる。


「栞さんは思ってくれへんのですか」

「え?」


おもわず、栞さんの右手首を掴んだ。


…どないしよ。暴走しよる、俺。
栞さん、絶対困っとる。
でも、止まらん。


「栞さんは、俺と一緒に回りたいって、思ってくれへんのですか」


栞さんの、大っきな目がぱちくりとする。
こんなん言われるとは、想定外やったんやろうな。


「それとも、ほんまは、別行動したいとか…」

「そ、そんなことないよ!!


…一緒にまわりたい…って、
お……おもってる…よ…?
あ、別に変な意味とかじゃなくて……」


栞さんの耳が、ちょっと赤くなってる。
え、照れてる……?めっちゃ可愛いやん。

初めて形勢逆転できた。


「はは、そんなら良かったです。
絶対、一緒に回りましょね」

「う、うん…よ、4人でね!?」


栞さんの反応に満足した俺は、
席に戻った後も、解散して家に帰った後も、
ニヤケ顔が抑えらへんかった。

……そのせいで、弟に、気味悪がられてしもたけど。
まあ、しゃーない。


あー楽しみや。
南条祭、ちょっとは2人になる時間あるとええな。