……全部のピンは倒れていなかった。
でも、何本倒れたのか、目視ではすぐに把握できない。


「…………」


私たちは、無言で頭上の液晶を見あげ、
映し出される倒ピン数を待つ。


『テレレッテレー』


呑気な音と共に、表示された数は……


「……………ろ……


6本……?」


最終投球で、真澄くんの倒したピンが、
5本以下なら、流星の勝ちで決着。
7本以上で、真澄くんの勝ちで決着……


…のはずだった。


「185点……」

「ってことは…」

「………引き分け、やな」


「…………」


なんとも言えない空気が、私たちを包む。
決着がつくと思っていた。予想外だった。


「…オイ。なんで6本なんだよ」

「しゃーないやろ。ほな今から風圧送ってもう1本倒したろか?」

「もうねーよ。バーカ」

また始まった。


「ちょっと。もう終わったんだし、
お店の迷惑になるから速やかに撤収するよ」


私は、2人に背を向けて、片付けの準備を始める。

すると流星が、私の腕をつかんで、
自分の方に軽く引き寄せる。
いきなりのことで、バランスを崩しそうになった。


「じゃ、しーちゃん。
予定通り、南条祭はオレと回ろっか」

「よ、予定…?ん?ってか、結局私と回りたいの?」

「…そんな約束しとったんですか、栞さん」
 
「え?いや…記憶にないけど…」

「してたじゃん、前世から」

「はあ?ほな俺かて、前前世で約束しとったから。こっちが先客やわ」

「あ、前前前世だった」

「すまん、数え直したら前前前前世やったわ」

…いや、いつまでやるんだ。
くだらなさすぎる。


「もー!2人ともうるさい!!」

私は、我慢の限界がきた。

「南条祭はみんなでまわる!
凛もふくめて、4人で楽しくね!
それでいいでしょっ、はい、決まり!」

2人の手に、各々の荷物を強引に手渡した。


不服そうな2人と、
ニヤニヤ見てるだけの凛を連れて、店外へ出る。

その後は、
有名チェーン店のファミリーレストランで昼食をとり、解散となった。