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「凛ちゃん。チョット」


ボウリングの受付前、
アタシ(笠井 凛)は、流星くんに呼ばれた。


その意図が、アタシにはわかっている。


「凛ちゃん、わかってるしょ」


「もち。流星くんと栞でチーム、でしょ?」


アタシが、親指をグーとつき出して頷く。
流星くんも、同じようにつき返してくる。


こんな笑えるくらいわかりやすいのに、
なんで当の本人の栞は気づかないんだろ。


「凛ちゃん、アイツのこと好きなの?」

「あー、純くんのこと?」

「そー」

「んー、好きとかじゃないかな。
イケメンだけど、なーんか繊細そうというか。
タイプじゃないって感じ。目の保養ではあるけどね!」


流星くんが、ため息をついて肩を落とし、
明らかに残念そうにする。


うん。わかるわかる。気持ちはわかる。

アタシが純くんを狙って、
それを栞が応援してくれる構図だと、
流星くんにとっては都合いいもんね。


「そもそも純くんさあ…
明らかに栞のこと好きな感じじゃん。
流星くん、ちょっとヤバいんじゃないの?」


「別にやばくねーし」


「だって見てよアレ。
なんか楽しそうにしてるけど、いいの?」


笑いあってる栞と純くんを指さす。
流星くんが舌打ちをする。


わー。あっちが光なら、こっちは闇………


「ま。どーせ、高校の間はなんもねーよ。
いつも校則がどうのって、うるせーぐらい言ってっし。
そのまま卒業すりゃアイツも諦めるしょ」


そう言うと流星くんは、勝手に用紙に記入して、
勝手に受付を済ませに行ってしまった。


うーん。本当にそうかなぁ。


だって純くん、絶対女の子慣れしてないのに、
自分から、栞の名前や連絡先聞いたりしちゃって。

今日だって、流石に断るだろうと思ってたのに。


そーいうタイプは諦めが悪そうだけど……


ま、アタシが応援してるのは、
[クソデカ感情こじらせ幼馴染]の流星くんでも、
[猪突猛進ピュアボーイ]の純くんでもない。


大好きな栞が、
翻弄されながら葛藤したり悩んだりして。
そんで最終的に幸せになれれば、それでいい。


そのためにアタシは、完全な傍観者として、
栞の一番近いところで楽しも……見守っていこうと思ったのでした。