「考えたんだけどさ。男女差って絶対あるし、
1人ずつ投げてもつまんないじゃん?
だから、チーム対抗戦にします!!」


そっか。
まあ、一理あるな。


「んでー、チームなんだけど……」


凛がチラッと、遅れて戻ってきた流星をみる。
それを見て、流星が無言で頷く。


「栞は流星くんと!
そんで、アタシと純くんでペアにしといた!
あ、もう用紙出してるから!2ゲームね」


「えっ、いつの間に?」


「しーちゃん。ホラ、靴。
左が22で、右が22.5」


「ええっ?いや、サイズは完璧だけど…
ほんとにいつの間に??」


「ねえ!せっかく勝負するなら、罰ゲームほしいよね」


「え、ちょっと……っ
「あ、凛ちゃんイイネ」


「でしょっ?なにがいい?」


「ねぇまってよ、罰ゲームなんて……
「んー……オモロイのがいー」


私の声は、2人の小悪魔たちによってかき消されていく。


こういうときの2人は、すごく息ぴったり。
もはや、2人が同じチームの方が良かったんじゃないか?


真澄くんは……唖然としている。
きっと、展開についていけてないのだろう。


「もー!やめてよ2人とも!!
今日は真澄くんの歓迎会でしょっ!!」


「王道はジュース奢り系じゃない?」

「えー別にいらねー」


……だめだ、聞いちゃいない。
渾身の抗議も届かず、私は肩を落とした。


「栞さん、ええですよ。罰ゲームでもなんでも。
関西おった時も、こんなんしょっちゅうありましたから。
それに…………」


真澄くんが、大きく息を吸う。


「ぜったい負けへんし」


——ピタッと、流星の動きが止まる。


さらにはピキッと、
空気にヒビが入る音もきこえたような……。


あれ………なんか嫌な予感?


先に仕掛けたのは流星だった。


「……じゃあ負けたほうが最後にオネショしたの、何歳か暴露」


「へぇ、そんなんでええんや?
全然罰ゲームに感じんなあ、度胸の問題やろか」


「……うぜぇ。じゃ、モノマネ」


「はは、それも同じやな」


「何だったらバツになんだよ」


「一曲熱唱とか?」


「は、それこそヨユーだし。音痴?」


「そ、そんなわけないやろ!」


「ちょっと2人とも!!
けんかはムグッ…………ん゛ー!!」


仲裁に入ろうとした私だったが、
凛の手によって口元を塞がれ、
言葉を封じられてしまった。


……凛は、心の底から楽しそうな顔をしている。


「どないするん、決まらんでコレ。
もう罰ゲームじゃラチあかんのちゃう?」


「……じゃあ。
勝った方が南条祭、しーちゃんと回る」


「んん!?」
突然自分の名前がきこえ、思わず喉から音が漏れる。


「……それ、あとから取り消しとか言わんやろな?」


「おー。その代わり、負けたらその日は大人しくしてろ」


「そっくりそのままお返しやわ」


「ちょ、ちょっと!何勝手に決めてるの!!」


凛の力がゆるまった隙をついて自由の身になった私は、満を持して参戦した。


だけど……


「しーちゃん」「栞さん」


「もう決まったから」「もう決まったんで」


2人の力強い目は、私に有無を言わさない。


ええ……。
流星はともかくとして、
真澄くんの、こんな強気な姿初めて見たよ。
男の子といる時は、これが普通なのかな……。


凛は、嬉しそうにウンウンと頷いていた。


「よーし!そうと決まったら、早く行こーー!
さ、栞も早く早く!」


目の前の3人は、そのままレーン方向へ歩き出していく。


睨み合ってる2人と、ウキウキ姿の凛。
コントラストが激しい。


ああ…これはもう私が折れるしかないのか。
深い息を吐いて、3人の背中を追った。