その後、
オーバーヒートした私たちの戦いは……


「しーちゃん中学のときも、
男のせんせーにばっか聞きに行ってたじゃん。
そーゆーの、まじだせぇ」

「そんなわけないでしょ!?」


……なんて、流星の勝手な言いがかりから始まって。


やれ、


「ダサいといえば流星だよ。
小学校の遠足で、おにぎり落としただけで泣いてたじゃん!ラップ巻いてあったの気付かずにさ」

「米を軽んじるなよ」

「米のことは軽んじてないよ!」


……だとか。


やれ、


「オレは、よーちえんの時からセンスあったし。
砂団子作ったときだって、
しーちゃんはウサギのフンみたいなんばっか作ってたじゃん」


「わかってないなぁ。
小さいのをたくさん並べるのが可愛いの!
っていうか、それは流星の方がひどかったよ。
他の子の砂団子も勝手に取り込んじゃって……」

「超巨大アルティメットブラックホールサンドね」

「ほらもう、名前からしてセンスないじゃん」


……なんて。


集合場所である駅に着いてもなお、
こんなくだらない争いを続けていた。


次はどの出来事を引き合いに出そうかと、
思案していた時。


——ポンと突然、自分の肩に誰かの手が乗った。


「わあっ!?」

「おっはよー、栞と流星くん」

「凛!びっくりした……。おはよう」


背後から私の肩を叩いたのは、
パンツルックの凛だった。


わーい。
凛もデニムだから、お揃いみたい。嬉しい。


「うん。朝から元気に痴話喧嘩ってるとこ悪いけどさあ、
あそこに居るの、もしかして例の転校生じゃない?」


『痴話喧嘩なんかじゃない』と訂正する暇もなく、
凛が指さす方向を見ると……


駅前の時計下のベンチに、真澄くんがいた。


立ったり、座ったり、
スマホを見たり、閉じたり……。
今日も忙しない様子。


というか足長っ!


グレーのパーカーに黒のスキニーってシンプルな格好だけど、すごくサマになってる。
あれだけ身長あったら、なんでも似合うだろな。


流星も真澄くんのような服を着てみたらいいのに。
彼は今日も締まりのない、オーバーサイズのシャツを着ている。


「アタシ10分くらい前に着いたけどさ。
彼、その前からあそこに居たよ?」

「ええ!?それは大変!!」


私は小走りで真澄くんのもとへ向かう。


突然知り合いが駆けてきて驚いたのか、
真澄くんは手に持ったスマホを落としそうになっていた。


「真澄くん、ごめん!!
誘っといて、待たせちゃったね……」


「いっ、いや!ぜんぜん!
今ついたとこなんで!たった今!!」


必死に庇おうとしてくれる……けど、
それは偽りだって、もうバレている。


「というか、今日は無理に呼んでごめんね?
ほんとは迷惑じゃなかった?」


「いや!いやいや!迷惑なわけないです!
今世紀最大に楽しみでした!!」


……真澄くんのつく嘘は、優しいな。


後ろから歩いてきた凛と流星が合流し、
今日のメンバーが出揃った。


「えっと………紹介するね。

まず、彼が真澄 純くんで……
こっちが私の友達の笠井 凛」


「凛です!純くん、ヨロシク!!」

「よ、よろしくお願いします、笠井先輩」

「おー!先輩って響き、すごくよい!!」


凛はご満悦そうだ。


「………で、知ってると思うけど改めて。
こっちが、幼馴染の斉藤 流星」


「……よろしく」

「へーい、どーぞヨロシク」


ちょっと。
それ、ほんとに思ってる?


2人とも決して、
よろしくしようとしている目じゃないんだけど。