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嵐の一日が明け、翌日の昼休み。
凛と共に、今日は忘れず持ってきたお弁当を食べる。
昨日あった出来事について、まだ凛には話せていない。
なんとなく、言いだしにくいし…
なんか、変な誤解されそうだし。
「ってゆーかさー、まだ見れてないんだよねー」
そう言う凛は、悔しそうに顔を歪ませている。
「何が?」
「ほら、昨日話した、噂の一年生。」
「ああ、真澄く…………転校生のことね。」
「…マスミ?」
しまった。
突然のことで、準備してなかったから…
「ねえ、いま、マスミって言った?」
自称イケメンハンター・凛の目が光る。
「ちがっ、えっと、ま、ます…ます……
ます、く…
そ、そう!マスク買わないとね!…って…話。」
いや、失敗した。
同じクラスの流星から名前聞いたことにすればよかった。
変に誤魔化したのが、いけなかった。
「怪っしぃ。
栞、マスクなんてしないじゃん。
ってか、いきなりそんな話するわけないもん。」
怪訝そうな顔で、凛が私を見る。
そりゃそうだよね。誤魔化せるわけないよね。
「…なに?もしかして。
転校生の名前、マスミくんなの?」
…ギクッ
「もしかしてもしかして、転校生と話したの!?」
…ギクギクッ
なんて勘の鋭い…。
ヘビのように目をした凛の顔を見れず、冷や汗が流れる。
話したどころか、一緒に部活したんだ〜⭐︎
…などと、ノンキに報告しようものなら、
私に明日は来ないかもしれない。
「えっと……あの……その………
ちょ、ちょっと飲み物買ってくる!」
ヘビに睨まれたカエル…もとい私は、
「コラ!逃げるな!」と制止しようとする凛を振り切って、体育館横の自動販売機へ向かった。
走らないよう、競歩で。