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しーちゃんは、ホント、メンドーな幼馴染。

まず第一に、鈍すぎ。

オレ(斉藤 流星)が、毎日飽きもせず、
部活終わりを待ってる理由も。

ちょっとでも長く、近くに居たくて、
わざと校章を外してるズルさも。

妬いてくんねーかなって、
あえて、性別を隠して転校生の話をする下心も。

あの時、アイツのそばで笑うしーちゃんを見て、
オレが不機嫌になった訳も。

なんも気づいてない。


あと、不器用。性格が。
手先は器用だけど。

しーちゃんの家で、いろいろあったことは、
そばで見てきたから、オレが一番よくわかってる。

けど、だからって、校則丸暗記までする?
交際禁止とか、誰も守ってねーよ。
みんな、裏でうまくやってんだよ。気づけよ。


んで、ド真面目だし、すげー頑固だから、
一度決めたら、ぜってーゆずらねー。


あとは、防御力がナイ。

そこそこカワイーし、
誰とでもカンタンに話すから、
勝手にホイホイ虫(男)が寄ってくる。
その度に、オレが追い払う。

大抵のヤツは、
オレがしーちゃんのヨコで、見せつけるよーにして、睨むだけで諦める。

けど。
睨み返してきたのは、アイツが初めてだった。

くそ、勝手に名前教えてんじゃねーよ。
もっと警戒しろよ。


こんなめんどーな幼馴染、なのに。

好き、って思っちゃう。


いつから好きなのか、あんまよくわかってない。

はっきりと気づいたのは、あん時…
一昨年、しーちゃんとこのおじさんが、
交通事故で亡くなって、その通夜の時。


しーちゃんは、
おっきい目からすげー涙流してんのに、
ゼンゼンぬぐったりしなくて。
気丈に、なんかを決意をしたような強い表情で、
棺の中のおじさんを見つめてた。


そんな姿見て、
オレがぜってー笑わせるって、おもった。
いまんとこ、怒らせてばっかだけど。


高校生になったら、
幼馴染から、一歩進むって決めたのに。

なんか、勝手にめんどい校則がある高校を選ぶし。
なんか、めんどーな奴も転校してくるし。

あーあ。はやくオトナになりてー。