【校内で携帯電話を使用してはいけない】ので、
いつも通り校門の外へ出て、
流星に部活終了のメッセージを送った。


流星を待つ間、今日の出来事を振り返る。


思い返してみても…嵐のような1日だった。


まさか私が、
今朝から話題になっている転校生と交流することになるとは………。


明日、凛に伝えたら、どんな反応するのかなあ…。
うーん。若干言い出しにくいな。


……でもまあ。
たまたま、うちの部に興味があっただけか。
部活が違えば、そんなに関わることもないよね。


彼のよくわからない行動は、
ちょっとツボだったけど——


「何考えてんの?」

背後から突然現れた流星が、私の顔を覗き込む。


「わぁ!びっくりした!
…脅かさないでよ」

「いや、さっきから呼んでんだけど」

「え、う、うそ……気づかなかった、ごめん」

「ぼーっとしてっからじゃん。はやくいこーぜ」


私を置いて進もうとする背中を、慌てて追いかける。
こちらが追いつくと、歩くスピードを緩めてくれる。


…意地悪なんだか、優しいんだか。


それから、
私がお弁当を忘れたこととか、
数学の小テストがあったとか、
そんな他愛のない話をして。


いつも通り流星は、
バカにしつつも、私の話に耳を傾けてくれていた。


………んだけど。


「で?さっき、何考えてたの」

急に、流星の声のトーンが1〜2段階落ちた。
なんとなく口調もトゲトゲしい。


「え?いや、別に…………なにも」

「…アイツのこと?」

「アイツって………真澄くん?」

流星が、横目で私をを見る。
………なんかちょっと、怖いんですけど。


「そう、そんな奴」

「そ、そんな奴ってねぇ……。
クラスメイトになったんでしょ?」

「忘れた」


嘘つけ!
……とツッコむ勇気はない。


「ってか、なに?アイツ。知り合い?」

「ううん、今日はじめて会ったよ。
なんか、お昼買いに行く時に会って………
……名前聞かれたの」

「なんで」

「そ、それは………。
私に聞かれても……わかんないよ……」


もう。
そんなに怖い顔をするくらいなら、
こんな話題、振らなきゃいいのに。


「というか。
なんで、さっきも今も、
初対面の真澄くんに対して喧嘩腰なの?」


「そりゃー」


流星の言葉がピタリと止まった。


「………そりゃあ?」


「そりゃー………」


それぞれの家の、玄関の前に着く。


私は、言葉の続きを待っているので、
ドアに手はかけず、流星の横顔をジッと見あげる。
 

すると流星が、


ゆっくりこっちを向いて………


少しだけ、口を開けて………


その目が だんだん 細く なって……?



…………ジトっとした表情を向けられる。


「しーちゃんの、バカ」

『バタン』


………私に何の断りもなく、
彼の家の中に入ってしまった。


「————っ!?」


もーー!いつもこんなんじゃん!
ちゃんと最後まで説明してよ!
あとバカって言うなーーー!


行き場のない怒りをぶつけるように、
流星によって閉じられた斉藤宅のドアを睨んだ。


……残念ながらそれは、
なんの生産性もない時間と成っただけだった。