──そう思った私がペコリと頭を下げたのと……
倒れていた加賀見先輩が小さくうめき声を漏らして上体を起こしたのは、ほぼ同時だった。
「あれ、俺もしかしてまた……」
起きたばかりの彼は、何やら一人呟きながら自分の両手を見て、現在地を確かめるように周りを見た。
そして次に、何故か「あ、しまった」という顔をしている先生を見て。
最後に、私を見た。
ぱっちり二重の三白眼は、私の姿を捉えて何度かまばたきを繰り返す。
「うわあ!」
で、大きな叫び声を上げた。
……もしかしてもしかしなくても、私を見て叫びましたかこの人??
そう思ったのは勘違いではなかったらしく。
「ひっ、来るな!」
加賀見先輩は、これでもかというぐらい顔を引きつらせた。
「え?」
「あ、いや、すみません、来ないでください……」
その震えた声だけで、彼がいかに必死なのかが伝わってくる。
一瞬、自分が恐ろしい容貌のモンスターか何かになったのではないかと錯覚してしまった。それぐらいの怯えっぷり。