「え、いや、だが……」


「大丈夫ですよ。この時間ならそこまで混んでませんから」




私は普段から電車を使って通学している。

だから慣れているつもりだったし、どう見ても庶民の乗り物に慣れていなさそうな加賀見先輩を一人や二人連れていたって何も問題がないと思っていた。

意気揚々と、学校から徒歩五分の駅に向かってしまった。


……まさかそれが大間違いだったとは。




「なあ、川咲」


「はい」


「妙に視線を感じる気がするんだが……」


「……ですね」




近頃、毎日のように一緒にいるせいですっかり忘れていた。

この加賀見律弥という男が、大変人目を惹くということを。




「ねえあの男の子めちゃくちゃイケメンじゃない?」


「しかもあれ、星彩学園の制服だよ? どこかのお金持ちの家の息子なんだよきっと……」


「てか星彩学園に通うような人でも電車乗るんだ」




同じ車両に乗る女子高生の集団が、先ほどからこそこそ言いながらこちらを見ている。

すいた車内には、彼女たち以外にも物珍しそうに、もしくはうっとりした目を向けてくる人たちがちらほら。