いつかどこかでその彼女と会ったときに、気まずくて顔も見られなくなるような話は聞きたくない。
遮られた天ヶ瀬は残念そうに肩をすくめる。
「やだなあ。僕らみたいな年頃の男子高校生にとっては、猥談だって十分健全な話題の一つじゃないか」
こいつは顔と女子の前での振る舞いは童話から飛び出してきた王子のようだが、実際の中身はこんな感じだ。
先ほど天ヶ瀬を川咲に引き合わせたくないと思ったのは、多分これが理由だな、と勝手に納得する。
「まあさっきのは冗談だけど。僕が18歳未満だからって理由でガードが固いんだようちの彼女。そういう真面目さも可愛いけどね。来月の誕生日が楽しみだ」
「良かったな」
「うわ棒読み」
頼むから、お前に夢を見ている女子の前でボロを出すなよ。
お前がモテてくれているおかげで、俺の方に来る女子の数がかなり軽減されているんだから。
「あ、そうだ」
「今度は何だ」
「川咲嬢をデートに誘ってみたら?」
「デート?」
聞き返した俺に、天ヶ瀬は笑顔でうなずく。
「教室で手を繋いでしゃべるだけの練習より、ずっと楽しいと思うよ」