最初は、何か落ちてるなあ……と思った。


茂みの近くに落ちている、黒い靴らしきもの。

だけど、何か違和感があった。


どうしてこんなところに靴が落ちてるんだろう。もしやいじめか何かだったりして? セレブたちでもこんな庶民的な嫌がらせするもんなの?

嫌な感じだな、と思いつつゆっくりと近づいてみる。


そして、思わず悲鳴を上げた。




「ひっ!」




先ほどの場所からは死角になっていたけれど、そこに落ちていたのは靴じゃなかった。

正確に言うと、見えていた靴は一部に過ぎなかった。



高等部の制服を着た黒髪。


あちこちに葉っぱやら何やらがくっついて大変なことになっているけど、静かに目を閉じる顔はずいぶん整った作りなのがわかる。




「し、死んでる……?」




縁起でもないことを呟きつつ、私はそーっと落ちているものの方へ近づく。


そう。落ちていたのは……人間だった。