……恐ろしいことに、言われるまで本気で忘れていた。
俺と川咲は今、隣の席に座り、手を繋ぎながら雑談をしている。
女性恐怖症克服に協力してもらいはじめたばかりの頃は、数分が限界だった。
その後徐々に時間を伸ばしていったが……今ではもう少しも気分が悪くなることはない。
むしろ……。
「何て言うか、そろそろ私も恥ずかしいというか……。手汗もかいてますし」
「そうか、悪い」
「この前まで数分で真っ青だったのに……慣れるスピードすごくないですか? 何なんですかいったい」
ここ最近は、こうして川咲の方からストップがかかるようになった。
ぱっと手を離されたことで温もりが消え、得も言われぬ寂しさが広がる。
……俺はまだもう少しこのままでも良かったのに。
無意識にそんな風に思っていたことに気付き、自分で驚いた。
いくら平気になったとはいえ、自ら触れたいという気持ちまで起こるなんて。
自分のことながらその変化が信じられない。